火事場の馬鹿力?死にかけたら能力アップ?:物事がスローモーションに見える現象のメカニズムについて

slow

以前に紹介したタキサイキア現象とその実験について、2012年にメタ分析による反論が出ていました。


フィンランドにあるトゥルク大学とかいう よくわからない名前の フィンランドで二番目にデカい大学の行動科学哲学課ヴァルテッリ・アルスティラ(ホンマにこの読みであってるのか不明ですが)による2012年のメタ分析にて、

参考:ヴァルテッリ・アリスラ「事故の最中は時間が遅くなる」2012年(英語)

 

その結論、ちょっと違うんじゃねぇの?ということで呈されていた疑問とタキサイキア現象についての解説がオモロかったので紹介します。

目次     

1.スローモーションには発生条件がある
2.スローモーション発生時の6つの特徴
3.そもそも何がスローモーションなのか?

1.スローモーションには発生条件がある

このメタ分析では事故などでスローモーション状態を感じたケースを徹底的に集めて分析してます。

slow

地質学者アルバート・フォン・サンクト・ガレン・ハイム(ホンマにこの読みで合ってるのか不明)の調査から、


1892年のアイスクライミング関連のクライマーへのインタビューではクライミング中にこけそうになった人のほとんどが、

 

ヤバいと思った瞬間、スローモーションになって冷静な対処ができたと述べているんだとか。

 

またノイスとキレッティによる1976年と1977年の分析では、

 

危機的な状況に陥った人の多くが明らかに時間の減速を感じたと報告してるそうです。(1976年85人中75%、1977年101人中72%)

omg

また同じくらい多くの人が思考速度が上昇したとも報告しており、中には時間が止まっていたとまで報告した人がいたそうです。

 

要するに経過時間はスローに感じられ、思考速度は高速化してたよっていう証言はめちゃめちゃあるぞということです。

 

そんなわけで、この分析ではスローモーションの発生には条件があるとされています。

 

それは明確に生命の危機が迫っている状況(病気を除く)とのことです。

 

まあ、そりゃそうだっつー話ですね。

 

この条件に当てはめるとイーグルマンとステットソンが実験した学生を鉄塔の上から仰向けにブチ落とすという実験は、

 

ハーネスも付けてるわけだし、明確に命の危機を感じるわけじゃないんじゃねぇの?という疑問があるとのことです。

 

ただここで注意したいのはスローモーションになったと証言している人も7割~9割であって、この現象も絶対ではないということです。

2.スローモーション発生時の6つの特徴

というわけでスローモーションになった人に共通する特徴を6つにまとめてくれていました。

1.周辺の状況が大幅に減速する感覚がある。

2.思考スピードの増加によって、精神的な速度が飛躍的にアップする。

3.状況が発生した時は、経過時間が実際よりも長く感じられる。

4.可能であれば、その状況下では迅速かつ意図的に行動できる。

5.その場合、生存に関連する問題のみに集中している。

6.異常に鋭い視力または聴覚。

参考:ヴァルテッリ・アリスラ「事故の最中は時間が遅くなる」2012年(英語)

 

てなわけでここでも、鉄塔からブチ落とす実験について、腕につけたデバイスの文字を読むのは、

 

生存とは直接関係ないから集中力が働かないんじゃね?という疑問が呈されてます。

 

ただ、現実問題として鉄塔からブチ落とすような実験以上のことができるかというと倫理的には難しそうなんですよね。VRとか使ったらイケるのか?

 

何しろマジで命の危機を感じさせるってなかなか簡単ではないし、命の危機を感じるような状況に陥りたいって人もなかなかいないでしょうしね。

 

この論文にしてもスローモーションに関して分析した論文は新しいものから古い物までありますが、ほとんどは体験談ベースだったりします。

nayami

なかなかこの手の現象を実験で再現するのは難しそうです。

 

ただこの論文はこれで終わりというわけではなく、ここからがけっこう面白かったです。

 

とりあえずスローモーションのような現象が発生するメカニズムについて、

 

事故に直面したとき人の脳内では神経伝達物質のノルエピネフリンを供給する青斑核ノルエピネフリンが起動しているんだそうです。

 

なんのこっちゃわかりませんがとにかく、2009年のレビューでは実際にこの物質によって注意の変化や最適な行動パフォーマンスを促進することがわかっているそうです。

 

これは以前にも紹介しましたが、闘争逃走反応(戦うか逃げるか反応)という生物に備わっている本能みたいなものの効果の一つです。

参考:戦うか逃げるか反応(Wikipedeia)

bakapower

猫とかがいきなり驚かされた時に、アクロバティックに逃げることがありますが、一瞬で戦うか逃げるかを判断し、そのことだけに集中する生存本能的なやつです。

 

この作用によってスローモーションに見えるような状況が発生しているのですが、ここでひとつ疑問が出て来ます。

 

スローモーションとは一体何を基準にしているのか?

 

スローモーションというのは何かと比較してスローでなければならないのであり、事故の真っ最中にいる人たちは一体何と比べてゆっくりだと思っているのか?

 

というところがこのメタ分析の面白い着眼点です。

3.そもそも何がスローモーションなのか?

人は基準となるものがないとスピードの感覚は自分の体感に依存するようです。

 

普段の自分の行動が遅いとも早いとも思わないのは、特に何かと比較していないからです。

tatol

その根拠として2004年のパーキンソン病(症状の一つとして動作がゆっくりになる)にかかった患者の例では、

 

時計を見ていない時は自分の動きがゆっくりになっていることがわからなかったそうです。

 

またイーグルマンと鉄塔実験をやった共同研究者ステットソンによるキーフラッシュの実験も紹介されていました。

 

この実験ではキーを押すと電気のフラッシュが光る仕掛けをつくっておき、被験者に押させます。

 

そして、その光るタイミングを途中で意図的に微妙に遅延させると、被験者はキーを押したら光ると思っているのでキーを押した直後に光っていると認識を修正してしまうのだとか、

 

その結果、光るタイミングの遅延を元に戻すと、被験者はキーを押す前に光っていると報告するようになったそうです。

 

論文では結果に対する期待が遅れに適応するのだと説明されています。

 

こんな感じで基準となるものがないと、人は勝手に判断を修正してしまうようです。

 

人間ってやっぱ不思議ですね。

 

では事故などの時にスローモーションだと感じる人は何と比較して周りがスローだと感じるのか?

 

今回のメタ分析では、自分の思考スピードと比較して遅くなっていると感じているとされています。

 

闘争逃走反応によって、脳内に分泌された神経伝達物質は脳を覚醒させて注意する先を切り替える速度や反応速度をアップさせます。

 

その結果、通常より速くなった思考と比較して相対的に周辺が遅くなっていると感じているというわけです。

 

つまり、周りがスローになってるように感じるのは、自分の思考速度が高速化してるからってことみたいです。

cant

時間単位の自分の思考量が増えたことによって、周辺が相対的に遅く感じるということですが、

 

確かにそうかも知れませんが、こればっかりは体験しないことには何とも言えなさそうです。

 

そして、死の危機に直面するような緊急事態には陥りたくなんてないので、体験したくもないですが、、、

 

というワケで今回の分析からも武道武術やスポーツへの応用という意味ではあんまし役に立たなさそうです。

 

なにせ発動条件が死にかけることってなると、普段はどうあがいても無理そうですし、よしんば普段から死にかけるような気持で生きてたら健康上むちゃくちゃ問題がありそうです。

 

とりあえず、わかったことは死にそうな危機に陥ったら生き残りをかけたラストチャンスが一応あるかもという感じです。

 

そういえば昔から、死にかけたら走馬灯という、これまでの人生が全部思い出されるみたいな現象があるとも言われてますね。

参考:走馬灯(Wikipedia)

 

やっぱ死にかけると全能力を使って助かる道を探すのかもしれませんね。

 

とはいえ、そうならないようにするのが武道武術かなと思っているので、どんなときにも平常通りにやれる、みたいなところを目指していきたいと思います。

関連記事

鉄塔を使ったデイビッド・イーグルマンの実験はこちらをご覧くださいませ。

物事がスローモーションに見える現象は果たして応用できるのか?:人の視覚と脳の科学

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です