信仰の起源?!トーテミスムとは何か?:合気道とトーテミスムは宇宙観を共有しているという話
世の中には違うように見えてけっこう似ているものというのがあります。トーテミスムと合気道って全然まったく1ミリも関係ないような気がしましたが、けっこう似てんなーと思う部分がでてきました。
合気道とトーテミスムが似てるなんて書くと、とうとうデュルケームを読み過ぎて頭がイカれたかと思われそうですが、まぁ聞けよ。
というわけで今回はトーテミスムとは何なのか?です。トーテミスム社会で生まれたらどんな生活をするのかを解説してみます。
目次
トーテムとは 合気道 何なのか?
まずなによりも重要になってくるのは「トーテム」です。
トーテムのことを塔みたいなアレのことだと思う人が多いかも知れませんが、あれはトーテムポールなので違います。トーテムとは「家紋」や「紋章」といった感じの意味で、そのマーク自体が「トーテム」なのです。
↑塔みたいなアレ
そのマークはだいたいが動物や植物を意味しており、その種類は500以上にものぼるそうです。(例外あり、ただし例外は近代化して生まれたトーテムが多数)
1つの部族にはだいたい大きくわけて2つの胞族というグループがあり、そこにはそれぞれ胞族トーテムが設定されています。胞族トーテムは同じ動物の別名称または別言語の同じ名称であることが多いそうです。
実際にある例でいえば白オウムと黒オウムという反対の性質を持った2つの胞族が存在します。
さらにその胞族の下には5つくらいの氏族があり、それぞれトーテムが設定されます。
黒オウムにはミサゴトーテム、ペリカントーテム、カラストーテム、毒なし蛇トーテム、樹木トーテムというように、関連している要素のある物が5つの氏族に所属しています。そしてさらにその中にすべての動植物や自然現象が含まれています。
もう一方の胞族にも対になるように向こうに月があったら太陽はこっちみたいな感じでなんらかの一貫性を持って氏族トーテムがあり、その中にあらゆる現象が所属しています。
宇宙のすべてが1つの部族であり、それを2つの正反対の胞族で分割し、さらに10以上の氏族グループに分類されているというイメージです。
胞族がもっと多い場合もあれば、氏族がもっと多い場合もあり、デュルケームが調査している時のオーストラリアでは氏族がガンガン増えて胞族の方が廃れてきていたそうです。
ちなみに合気道オタク的にはこの部族の考え方は合気道や一部の神道の宇宙観である「一元」の考え方とほぼ一致しています。
最初にたった1つの根元があり、そこから陰陽2つの異なるものが生まれ、その陰陽から陰の陰、陰の陽、陽の陰、陽の陽みたいな感じで4つ、16、256、、、という感じで倍に増えていって宇宙のすべてが1つのものから生まれたというような考え方です。
ホールケーキをいきなり五等分するのは難しいけど、半分に切ってから両方を五等分するのはわりと簡単、みたいな話です。多分。
正直なところ合気道開祖による宇宙観の解説は弟子達が「マジで意味わかりませんでした。めっちゃ話長いし正座してる足痛いし、、、はやく稽古したい(泣)」みたいな事を口々に言ったくらい謎の話とされています。
個人的にも「確かに筋は通ってくるけどホンマかいな?」という疑いの気持ちは常にありましたが、まさかアボリジニの宇宙観と繋がるとは思っていませんでした。疑ってゴメン。
これからは合気道をやっている人にドヤ顔で「オーストラリアのアボリジニの宇宙観をご存知でない? あれは合気道と同じ思想ですよ」などという、何言ってんだこのアホはと思われるような完全に自己満足でしかないマウントを取ることができます。
みなさんも是非やってみましょう、何言ってんだこいつ?と思われることができます。
おれは何を言ってるんだ?
そんなわけで「トーテミスム」というのは、森羅万象の代表を何らかの動物のトーテムとしている部族のことであり、
それぞれのグループがトーテムとしている動物を崇拝しているというわけではなく、あくまで同じ物として自分たちも神聖なる動物と同じ名前を持ち同じ存在だと考えています。
ちなみにアボリジニーの人たちは自分が所属する氏族と胞族に関係するトーテム動物は食べることがでません。といっても完全にダメというわけではなく、可能な範囲でって感じになります。
中には水がトーテムとかいうところもあって、流石に飲めないと死ぬので、その場合は他の氏族の人に水を汲んできて貰わないと飲めないみたいな感じになります。
逆に、例えば木を加工して何かつくりたい時は木がトーテムの氏族の許しを貰ってからでないと何らかの原因で最悪死ぬというふわっと恐ろしいルールがあったりなかったりします。
そんな感じで一度トーテムが決まると、そのトーテムと同じ物となり、そしてそのトーテムを守ることになるわけですね。
細かい話はやたらとややこしいのでとりあえず話を整理するために、仮にあなたがどこかの部族に生まれたということで一生をざっくり見てみましょう。
トーテミズムでの一生
基本的にふたつのパターンからあなたにトーテムが授けられます。母親と同じか、もしくは祖先が持っていたトーテムを受け継いで黒オウムか白オウムのどちらかの胞族に所属し、氏族も決まります。
とりあえずトーテミスムは男性的な社会なので男の子だとしましょう。
あなたは生まれた瞬間、ホニャララ部族の黒オウム胞族のカンガルー氏族みたいな感じでトーテムが決まります。そして黒オウム胞族とカンガルー氏族のルールに従って生きることになります。
基本的にトーテム動物と自分は同じ物です。自分の写真を見たら「あ、カンガルーが写ってる」と言う認識になります。
また自分の所属するトーテムとそれが関係するあらゆるものがあなたの親戚なので、そういう扱いをすることになります。
他にもトーテムはあります。イニシエーションの前後で貰える個人トーテムや性別で決まる性的トーテムなどです。
個人トーテムが鷲だと「先を見通す力があるんだなぁ」と思われたり、熊だと「どんくさいんだろうなぁ」などと思われて同一視されるんだそうです。
性的トーテムは尊敬しないと大変なことになるということで、まぁ異性を尊敬していないと大変なことになるのは現代でも一緒ですね。
またあなたが所属した氏族トーテムによってそれぞれ子供や女性が絶対に近づいてはいけない場所が存在します。それは触れることはもちろんのこと見てもいけない禁忌です。
そこは先人の神聖な血が埋まっている場所だったり、「ヌルトゥンジャ」あるいは「ワニンガ」と呼ばれる槍みたいなのに色々装飾した旗だったり祭壇みたいなものだったりします。
ちなみにこのヌルトゥンジャは狩りなんかでみんながでかけている時には集合場所みたいな役割を果たします。オーストラリアの原住民に家という概念がないので、そこにすべてを置いておきます。
そこには「チュリンガ」という最も大切な「聖なる物」みたいな意味の、紐を通して振る舞わせる穴の開いた石か木片で出来た聖なるアイテムが掲げられます。
この「チュリンガ」こそが最も重要な氏族の宝です。これを使って色々な儀式をすることになります。儀式の時には他の氏族の代表者もやってくるほど重要です。
この「チュリンガ」を治める地下室がある場所「エルトゥナ・チュリンガ」が最も重要な聖域です。
ある程度の年齢になるとイニシエーション(通過儀礼)、いわゆる成人式をすることになり、あなたははじめてその地に足を踏み入れることができるようになります。
そしてそこで割礼的な儀式を受けることになります。その時に、身体にトーテムの図案を刻んだり、あるいは自分の所属するトーテムに応じた歯を抜いたり、下部切開というアレをアレして血を流したり、とにかくあいたたたたたという感じの儀式を行います。
基本的に血は神聖なものとして扱われます。そして成人式の後、あなたは真の一員として認められ、聖地に踏み込むことと、チュリンガをある程度の権限で使うことが許されます。
効果は以下の通りです。
聖地(エルトゥナ・チュリンガ)の効果
・追われてる時にそこに逃げ込めばセーフ
・動物でもそこに逃げたらセーフ
聖なる宝「チュリンガ」の効果
・触れると傷を癒してくれる、特に割礼の傷には効果絶大
・髭が生える
・トーテム動物が繁殖する
・敵は弱体化する
・戦闘において自分がチュリンガを持っている事を相手が知ったら戦意喪失する
・儀礼ではチュリンガを油を塗ってみんなに塗ることでパワーを分け与えることができる
・チュリンガを誰かに貸した場合、胞族全体が2週間喪に服して泣く
髭が生えるなんてのは、成長に従ってだいたい生えてくるもんですがこの社会では「お前それチュリンガの効果やんけ」などと言われながら「チュリンガすげぇ」ってなってるとしたら、なかなか微笑ましい光景ですね。
ちなみにこの効果を別の氏族が使いたいと言うことでチュリンガを貸すときがあるのですが、この場合、代わりに相手の髪の毛を貰えます。髪の毛はチュリンガと同等の聖なるものなのです。
やがてあなたは年老いてくるのですが、老いてくると聖なるレベルがアップしてきて、食べてはいけないものがなくなってきます。原始の社会で年寄りが食事制限してたらすぐ死ぬだろうし……
そして迎える死。
あなたの毛髪はヌルトゥンジャに巻き付けるための聖なる毛髪として加工されるため即座に切り落とされ、聖なる遺体は女性の目に触れない遠くに安置され、場合によっては聖なる肉体から聖なる部位を持って行かれます。
そしてあなたが所属するトーテムに従って、そのトーテムと親戚関係にある木とかを使って棺桶がつくられそこにおさめられて埋葬されるわけです。
ちなみにトーテミスムには先祖崇拝的なものはないので、死んだらよっぽどの英雄でない限り葬儀をしてお終いです。こういうとこだけやたら原始的ですね。
こんな感じでトーテミスムでは人生のはじめから終わりまで、勝手に決定したトーテムによってあなたの人生は左右され続けるというわけです。ムチャクチャな一方で楽な人にはかなり楽なシステムだとも思えますね。
ここまでの参考:デュルケーム『宗教生活の基本形態(全)』第2部 第1章~第4章
まとめ
正直なところ今回はかなりざっくりした内容となっております。詳しく知りたい人はちゃんと読んでねという感じです。
このトーテムというのは、一昔前の職業の世襲みたいなのとニュアンスが近いようにも感じます。トーテムは社会全体で世襲していたみたいですが。
これによって宇宙全体とゆるく繋がった関係にあるというのはなかなか面白いです。基本的に敵ではなく仲間という意識でいるわけです。
とにかく今回は合気道的宇宙観とトーテム的宇宙観がだいたい一緒だったという時点で、デュルケーム読んで良かったなという気になっています。
デュルケームはアボリジニーがこうした発想に至った理由として、人類の階層社会がこれをもたらしたとしています。これを読んでると、宗教は根本的に集団生活が必要だからそのルールを決めるために生まれたような感じがします。
考えてみると猿だって集団で生活してるわけだし、集団の中から宗教が誕生するのは別におかしなことでもなさそうです。
ちなみに合気道開祖は「精神や肉体、あるいは宇宙とは魂の緒で繋がっている」といったニュアンスのことを語っており「何言ってんだコイツ?」と思ってたんですが、
トーテムによってあらゆるものと繋がる内的な紐帯(二つのものを結束させる帯)があるといったような記述を読んで、魂の緒ってのも紐帯的な意味合いだったんかなーなどと妄想が捗りました。
今回、図らずもトーテミスム的宇宙観と合気道的宇宙観がけっこー似ていたので、やっぱ人の考えることなんてのはそうは変わらないのかも知れませんね。
というわけでトーテミスムは合気道!ということで一つどうでしょう?
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