武道的思想のススメ:落合陽一や稲盛和夫から考える東洋思想

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陰陽論的な考え方というのはかつての日本の主流であり、

近代化にあたって捨てられていった考え方です。

しかし、現代ではまたこの考え方にスポットが当たりはじめているように思います。

ひとつのグループに固執せずに、色んな所に所属したり、多様な考え方を取り入れるというのは今まさに時代の流れとして再評価されてきています。

そんなわけで、東洋的な考え方というやつがどういうものなのかをざっくりと。

     目次     
日本における東洋思想
ビジネスの東洋思想
学習としての東洋思想

日本における東洋思想

つくば大学の研究者であり、教授であり、アーティストでもあり、実業家でもある落合陽一が書いた『日本再興戦略』では、

日本を再興させる戦略のひとつとして「東洋思想を復活させること」みたいなことが書いてあって面白かったです。(1)

とはいっても、東洋思想は日本が近代化していくにあたって相当廃れてしまった考え方でして、

なんでかっていうと、まずクソまわりくどいからです。

『日本再興論』では東洋思想というのは、こんな感じで語られています。

西洋的な思想は言葉の定義が明確であり、わかりやすいという魅力がありますが、わかりやすさばかりを求めてはいけません。定義によるわかりやすさの対極にあるのが、仏教や儒教などの東洋思想です。身体知や訓練により行間を読む文化です。

落合陽一『日本再興戦略』より抜粋。

 

正直なところわたくしも、行間を読むって何それ、めんどくさっ!というタイプの人間だったのですが、

合気道開祖の『武産合気』などという普通なら一生使わない知識を要求される書物を読んだことで、たぶんけっこうな訓練になったんだと思います。

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武産合気を読むと様々な一見さんお断りワードにでくわす・・・。

かぶれてみると東洋思想ってのも、なかなかいいもんです。

東洋思想のいいところは、読む側のレベルアップが要求されるってことでしょうか。

『武産合気』でいうなら、様々な用語の知識を調べたり合気道の稽古そのものをしたりすることでちょっとずつわかってくる、

そういう めんどくさい事 努力をしないと、ただの上っ面だけの言葉では何もわからないというのが面白いところです。

百聞は一見にしかずなんて言葉があるように、言葉を読んだだけで伝わることなんてのは所詮はちょろっとだけなのです。

逆に一見さんお断りなのが悪い部分だと思います。

それなりの興味がないとまず読もうと思わないくらいわかりにくい。

そして東洋思想というのは何故かは知りませんが、幻想的なイメージで語られてしまうことが多いと思います。

ビジネスの東洋思想

ビジネスに東洋思想を取り入れた例として、稲盛和夫を挙げたいと思います。

京セラやKDDIといった超有名企業を創業した人であり、2010年に経営破綻したJALを見事に再建したことでも知られてます。

そんな彼が常に会社において打ち出していた理念が『動機善なりや、私心なかりしか』ってものです。(2)

はいクソわかりにくいですね。ともすればキレイ事の一言で片づけられるような言葉です。

しかしちょっと待って欲しい。稲盛和夫先生はこの言葉と共に偉大な業績をちゃんと残しています。

『動機善なりや、私心なかりしか』というのは、何か事業を始める時、その事業をすることにあたって正しい動機があるか?という意味です。

まだキレイ事っぽいですが、これってビジネスにおいては当たり前のことです。

だって動機が善というのは、お客さんに需要があるってことです。

つまり『動機善なりや』というのは、ちゃんとマーケティングと顧客のリサーチができてるか?ってことです。

『私心なかりしか』とは私利私欲でやってはいないか?という意味です。

目先の利益に飛びついて後で大損するというような話はよくある話です。

単なる自分の利益のためだけにやろうとしてないか?と自分に問いかけるというのは、バイアスの解除方法としても正しいやり方です。

社会的にも正当な行いかどうかなど、利益以外の視点からも物事を見ることでリスクを回避できるというわけです。

経営者などの権力を持った人は普通の人よりも何倍も不正に手を出しやすいことがわかっています。それを防ぐと言う意味でも「私心なかりしか」の精神は大事です。

そして稲盛和夫はこうした自分の考え方や会社としての考え方を『フィロソフィ』として冊子にまとめて従業員に持たせているそうです。

JALなんかでは、当初は経営破綻の真っ最中なのにこんなキレイ事の研修会なんかして意味あるの?

という反応だったそうですが、最終的にはこの精神を持つことが奇跡的な復活の足がかかりとなり、JALフィロソフィという独自の文化を生み出したそうです。

経営破綻を理由に、これまでお世話になっていたグループから別のグループに移ろうとしたり、通常では取るはずのない行動を取ろうとするときに、この言葉が刺さってくるのです。

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従業員にシンプルな行動目標を持たせることはハース兄弟の『アイデアの力』でこのような事例が紹介されています。(3)

サウスウエスト航空は「最安値の航空会社か?」を常に問い続けろと社員に教えることで、世界で最安値の航空会社であり従業員の満足度も高い会社をつくりました。

この言葉があれば、たとえ乗客が喜ぶからといって機内食を豪華にしたりはしないということは従業員の共通認識となります。

そして代わりにコストがかからないのであれば、従業員の誕生日をフライト中にお祝いしてもいいということにもなるそうです。

このような的確な認識を持たせることは、会社で言わなくても人が動くようになるってわけです。

「動機善なりや、私心なかりしか」はこれの日本バージョンって感じでしょうか。

当初のJALの従業員のように、人というのはこういうキレイ事みたいな言葉に拒否反応を示したり、表面だ聞いて絶賛したりします。

ただ、その言葉の内容を本当に理解しようとするには、もう一歩踏み込んだところまで自分を高めていく必要があるってわけです。

何も知らずに「動機善なりや、私心なかりしか」なんて言葉を聞いても、まーたオッサンがカッコつけてなんか言ってるわ、くらいにしか受け取れません。

でもちゃんと考えてみると、実は科学的な面もあるし、学べる部分があるというわけです。

学習としての東洋思想

またハース兄弟による変化を起こすためのテクニックを集めた『スイッチ』では、しなやかマインドセットという考え方を持つことが大事だとあります。(4)

マインドセットっていうのは暗黙知とか心理状態みたいなことをカッコよさげにした言葉です。

しなやかマインドセットというのは「人の能力は鍛えられる」ということを信じることです。

これって意外と日本人はできてると思うんですがどうなんでしょう。

努力すれば自分を変えることができるという考えがあれば、人は常に自分を変化させていこうという意識を持つことができるそうです。

東洋思想というのは、理解するために変化を要求します。

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そして理解できたということは、自分が変化できたという事実を教えてくれます。

つまり人が「しなやかマインドセット」を自然に獲得できるって寸法です。

東洋文化である職人とか、茶道みたいなものは、常に自分の技術や品物を高めていくことがセットになっているように思えます。

日本が戦後、急速に海外から色んなものを取り入れて発展できたのは、それまでに培ってきていた「自分は変われる」というしなやかなマインドセットがあったからかも知れません。

そういった意味で、落合陽一が言うように東洋思想をもう一度取り入れるってのは面白い試みだと思います。

というか、現状では東洋思想が嫌われすぎてるようにも感じます。

合理性やシンプルさが求められていることは当然なのですが、東洋思想はそこからさらにもう一歩踏み込むためには重要な要素なんじゃないかなーと思ってます。

瞑想がマインドフルネスとして海外に取り入れられたように、難しいけれど高めるだけの価値があるものというのは間違いなくあります。

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稲盛和夫もかつての著書か何かで「西洋人には私の考えが理解できないようだ」みたいなことをボヤいていましたが、最近では西洋でも講演などが開かれているそうです。

そういった意味で、東洋思想というのはこれから再評価される時がくるかも知れないっすね。

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参考文献

(1)落合陽一著『日本再興戦略』

(2)稲盛和夫著『心。』

(3)チップ・ハース&ダン・ハース『アイデアのちから』

(4)チップ・ハース&ダン・ハース『スイッチ!』

 

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